top of page

「百万遍 古都恋情(上・下)」

  • sunsetgang
  • 2023年5月19日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年5月20日

2009年に新潮社から発売された、「花村萬月」の長編小説です。時代設定は1972年の京都。主人公は、あてもなく京都にたどり着いた17歳の「惟朔(いさく)」。内容はと言うと、むむむ…主人公の日常生活の描写以外は、もうほぼ官能小説レベルでありまして、とてもじゃないがここでは書けません。なんでも「花村萬月」の体験をベースに書かれているとのことでいやはやなんとも。自分の学生時代を振り返ったとしても、ホンマにこんな奴っていたのかな?と思ってしまいます。


さて、この小説の設定が1972年ですので、物語の中では当時の地理や風物、市電が走る街の様子、市電の停留所などのほか、「ゴーゴー喫茶」などに代わって台頭してきた音楽喫茶がたくさん登場します。本編中、主人公の「惟朔(いさく)」が、京都で知り合った仲間のタロウに京都の「ロック喫茶」、「ジャズ喫茶」の所在地を尋ね、タロウが市電系統図に所在地を記入していくシーンがあります。


“まず<POPEYE>を河原町三条と四条のあいだに記し、北に上がって一本松電停のところに<MAP>、そして<ジュジュ>と書き、<MAP>は京都で一番最初にできたロック喫茶で、村八分の山口富士夫がよく顔を出すと呟いて、日本で最初にできたロック喫茶は東京は国分寺の<ほら貝>だと教えてくれた。さらに<MAP>の西側の烏丸鞍馬口と烏丸中学前のあいだに<縄文>、そして北白川の少し先に<ダムハウス>と書きこんだ。さらに烏丸今出川と今出川新町の間に<カビ>と記し、これは本当は漢字だと念を押した。”

“わざわざ<blue note>まで書き入れてくれたが、もちろん惟朔は黙っていた。東山三条の<カルコ>も場所だけなら知っている。けれどタロウに言わせれば正確には東山三条ではなく蹴上だということだ。荒神口の<しあんくれーる>を書いて、タロウは思案顔になった。しばらく顎のあたりを弄んでいたが、市電系統図ではなく区分地図のほうをひらき、河原町蛸薬師<蝶類図鑑>、今出川寺町は<ビッグ・ビート><幻潜館>、さらに寺町上がる<52番街>、四条小橋の<ダウン・ビート>、左京区北白川<メルヘン>、聖護院山王町<YAMATOYA>、東山区山科<スイング>と書き込んでくれた。”


読んでいて驚いたのは、当時、京都に実在していた有名な「音楽喫茶」のほとんどが登場していることです。このほかにも「ほんやら洞」や金沢にある「もっきりや」に関する描写も出てきます。また「blue note」や「ダムハウス」などは、店内でくつろぐ主人公の描写とともにお店の様子も併せて紹介されており、なかなか興味深いです。



 
 

Chiba City SHIMUCHIN_33

©2023 京都音楽喫茶記録帖。Wix.com で作成されました。

bottom of page