江神二郎の洞察
- sunsetgang
- 2024年7月21日
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更新日:3月31日
「江神二郎の洞察」ですが、これは学生アリスシリーズの短編集です。その中の一つ「ハードロック・ラバーズ・オンリー」に音楽喫茶は登場します。 作者の「有栖川 有栖」の経歴を調べたら、1959年4月生まれ、同志社大学法学部の卒業で、大学時代は推理小説研究会と書いてあります。卒業アルバムを確認したら・・・なんといらっしゃいましたよ。「有栖川 有栖」はペンネームなんで、もちろん本名で。私と同学年でありました。
“その店の存在を知ったのは、大学生活にも慣れてきた五月の中頃。昼食を一緒にする相手をつかまえそこねた僕は、一人で学生食堂のランチを掻き込んでから、余った時間を潰すために校門を出た。新緑が萌える向かいの京都御所の木陰でぽけっとしようか、それとも新しい喫茶店でも開拓しようか決めかねつつ、今出川通りを東にふらふら歩いていたのだ。その雑居ビルの一階のよく繁盛しているパン屋は普段から目に留めていたが、三階の窓ガラスに「coffee&music」とあるのに初めて気づいた。<マシン・ヘッド>音楽喫茶の類らしい。とすると、店名はディープ・パープルの名盤のタイトルから採ったものだろう・・・”
“狭くて急な階段を上り、分厚そうなドアの前に立つと、中から聞き覚えのあるエアロスミスのナンバーが流れ聞こえていた。ドアには、窓ガラスにあったのと同じ文字の他に、極太のフェルトペンでこう書かれている。HARD ROCK LOVERS ONLY”
ここまで読むと、当時の同志社大学周辺の音楽喫茶を知る方は「おお~、これは!」となるはずです。ここのビル、一階がパン屋だったかどうかは覚えていないのですが、1983年の情報では一階は「食堂千石」、二階は「レンタルレコードレック」、三階に「ニコニコ亭」です。つまり、小説で出てくる<マシン・ヘッド>は「ニコニコ亭」で間違いがないと思われるのです。さらに扉に書かれている「HARD ROCK LOVERS ONLY」。これは「ニコニコ亭」の扉に書かれていた「一曲300メートル」のメッセージを置き換えたものと思われます。
ちなみに私が初めて「ニコニコ亭」に行った時にかかっていたアルバムは・・・記憶が曖昧なのですが、ボストンの「幻想飛行」かTOTOの「ハイドラ」のどちらかでした。イメージとしてディープ・パープルとかツェッペリンとか、ちょっと古めのハードロックのイメージが強かった「ニコニコ亭」ですが、新譜などを聴くこともできるお店だったのであります。

