京都同やんグラフィティ・青雲篇
- sunsetgang
- 2023年5月27日
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雲水舎が提供する「いま」や「みらい」にワクワクできる電子書籍レーベル「NEOタメ」から発表された専属作家「越智魔琴」の青春小説です。電子書籍のみです。
主人公は愛媛県今治市出身の越智誠(同夢舎大学文学部日本文学専攻)。京都での大学生活の下宿先となった、帷子ノ辻の近くにある「山本荘」で出会った、新潟出身の平田浩二(同夢舎大学法学部)と杉浦雅史(同夢舎大学文学部新聞学専攻)の三人の同やんの日常を中心に描かれています。
小説の中では、当時の京都のジャズ喫茶や、ライブハウスが紹介されています。
“出町柳の商店街の中にあった「五十二番街」では、同夢舎大学の軽音楽部がたまにライブをやっていた。三条河原町の地下にあった巨大なJBLのスピーカーが自慢の「ビッグ・ボーイ」があり、高野悦子の『二十歳の原点』に登場する「しあんくれーる」ではマイルス・デイビスの曲がよくかかっていた。ママは、デイビスと交流があると聞いた。
寺町今出川の同夢舎女子大寮の裏手にはドアのペンキがまだ乾いていないような「SMスポット」があった。「SMスポット」というと、とんでもないところのように思われがちだが、ジャズ通を唸らせる名盤がかけられていた。難点は店が狭く、照明が暗いので手探りで店に入っていかなければならなかった。
平安神宮の近くにはジャズ喫茶の草分け「ヤマトヤ」があった。マスターは、態度の悪い客には平気で注意する。古い屋敷のような建物の二階にあり、大きなスピーカーがしつらえていて、大音響でジャズが流れている。スピーカーの近くに席をとったら、店を出ても頭の中を曲が鳴り響いていた。”
“ライブハウスが誕生したのは同やんの三人が大学に入学した年で、次に堀川丸太町の近くに酒蔵を改造した「拾得」ができた。ロックとブルースの好きなまーちゃんは、毎週月曜日に「拾得」で開かれていたブレイク・ダウンのライブによく行った。”
しかしこの小説、1972年当時の下宿での学生生活、学生運動、テレビ番組、音楽(歌謡曲から「はっぴいえんど」や「久保田誠と夕焼け楽団」、「ブレイク・ダウン(踊るポンポコリンの近藤房之介のバンド)」などのロックバンド)、アイドル、ファッション、ストリップ劇場などの性風俗まで、もう恐ろしいほど細かく解説されており、本当に脱帽ものでありました。
ちなみに小説中、学生らが通う大学名が「同夢舎大学」や「同夢舎女子大」「立志舘大学」「国立の洛東大学」などとなっていますが、完璧に「同志社大学」であり「同志社女子大」であり「立命館大学」であり「京都大学」であります。また、同志社大生は「同やん」、立命館大生は「立っちゃん」、京大生は「学生さん」と呼ぶ…と大学時代に下宿のおばはんから聞きました。
